CRAFT SPACE わのBLOG

新年、明けましておめでとうございます。

2011年1月 2日 00:09

皆様、穏やかな新年をお迎えのことと思います。
今年1年の皆様のご健康とご多幸を心よりお祈り申し上げております。
本年も、どうぞ宜しくお願い申し上げます。

私どもは、表向きの営業は27日に終えたものの、残った荷物の発送やその他の
用事で31日まで出たり入ったりしておりました。

住まいの方は、今年後半からの催し続きで、まったく放っときぱなしということもあり、
とても数時間では、年末の大掃除からお正月の準備など間に合うはずもありません。
と言うわけで、いつもと同じ超手抜きの、つまり何もしないままお正月を迎えました。

でも、これは子どもたちにとっては、とても良くないことなのだと思います。
私が、子どもだった頃、12月になり、クリスマスが終わる頃から、家の中の空気が
変わりました。
我が家では、父が家で仕事をしていたこともあり、食事は、いつも家族全員でするのが
当たり前でしたし、また、両親は、行事を大切にしていたので、家族の誕生日や、
ひな祭り、クリスマス、お正月は、つつましくもそれなりのご馳走を用意して皆で食卓を
囲んだものでした。それは、姉が結婚し、また、兄が地方の大学に行くためにそれぞれ
家を出るまで、ずっと続きました。

母は、もともといつもまめまめしく動き回っている人でしたが、12月半ばを過ぎると
いつもにまして忙しそうにしていました。大掃除をしたり買い物に出かけたり、おそらく、
先生方(柳宗悦先生や芹澤銈介先生他)にご挨拶に伺ったりもしていたように思います。
用事が多すぎるせいか少々機嫌が悪くなるので、怒られないようにいつも母の顔色を窺って
いたような気がします。

いよいよ暮が近づくとお正月の用意が始まります。ブルーフレームという筒型の石油
ストーブの上に母愛用の古い鍋が乗り黒豆やらお煮しめやら毎日、何かが煮えていました。
その臭いが、当時は、それほど好きではなかったのですが、今思うと懐かしい我が家の
暮の臭いです。

子どもたちも分担で掃除をさせられ、昆布巻きにかんぴょうを結んだり、お芋の裏ごしを
手伝わされたり、けっこうこき使われました。家の周りの掃除、そして門に注連飾りを
掛けるのは父の仕事。部屋には、小さなお鏡餅と水仙の花が飾られ、準備万端全てが
整うと、あのあわただしさは、嘘のようにすっかり消えて静かにお正月を迎えることに
なるのです。

大晦日の夜、枕元には、お正月に着るよそ行きの服を用意します。そして、元旦、
改まった気持ちで、家族と新年の挨拶をして、みんなでお雑煮を頂くのです。
食卓には、家族全員に和紙に墨で銘々の名前を書いた父手作りの箸袋がおかれていました。

きのうの延長、きのうが今日になっただけのはずなのに、元日は、全てが新しくなったような
気持ちがしました。今考えると、あのあわただしくも忙しかった暮の準備があったからこそ
なのでしょう。1年間関わった全てのものに感謝し、そして、新しい年を迎える、というけじめの
儀式なのです。それを両親は、私たちに教えていたのです。私たちは、本当は、それを受け継ぎ、
わが子に伝えていかなければならないのです。でも、現在、私は、それをしていない。
子どもたちは、私が経験してきた暮れ、正月を知らない。なんと、気の毒な、申し訳ないことをしているのでしょうか。ある意味、これは文化の喪失ということになるのかもしれません。

実家で過ごした娘時代の最後の数年間、私は、スキーに夢中になり、暮正月をいつも行く戸隠で
過ごすことが度々ありました。スキーをしたかったということもありますが、うるさい親から離れて、
気ままに友人たちと過ごしたい、という気持ちもあったのかもしれません。母は、とてもこれを嫌い
ました。「ちゃんとうちのお正月を家族と過ごさなければいけない。」と。

母は、私を嫁に出す前に家庭の行事・伝統を伝えたかったのだと、今になって思い知ります。

でも、最後に、言い訳がましいですが、我が家で、最低限これだけは続けていることをお話します。
掃除、片付けは間に合わなくても、元旦に頂くお雑煮だけは、昆布とかつお節でだしをきちんと
とること。つまり1年の最初の食事くらいは手抜きではなく、心を込めて作ったものを家族に
食べさせたいと思うのです。そして、1・2品は、お正月料理を手作りします。

今年は、昨年の暮に福知山にお住まいのお客様が京野菜を送って下さったおかげで、
紅白なますとお煮しめを作ることができました。京にんじんの赤くてきれいなこと。いつも
食べている西洋にんじんとは比べ物にならない、本物のにんじんの味がしました。
他には昆布巻きも作ってみました。

私が両親にしてもらったことに比べたら、ほんとにささやかなことです。どれだけ、
子どもの中に残っているのでしょうか?彼らが将来、自分の家庭を持ったとき、私の両親
から伝わったことは、途切れることになりますが、彼らなりに、また、新しい方法を考えて、
正月の儀式をしてくれると良いと思います。


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